白洲次郎 占領を背負った男
- 作者: 北康利
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/07/22
- メディア: 単行本
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- 占領軍の横暴(その背景に見下す感情があることは明らか)、それに尻尾を振る日本人の姿。
- 徹底した検閲(これは江藤淳も書いている 閉された言語空間〜占領軍の検閲と戦後日本 - kfc00326の日記)
- フィリピン方面の指令だった山下奉文陸軍大将がほとんど言いがかりに近い罪状で絞首刑に処せられた背後には、マッカーサーがフィリピン撤退に追い込まれたことに対する報復の意図があった。
- 近衛文麿は憲法草案作成をGHQの意向をうけて実施していたが、その近衛文麿に戦犯指定の動きがあると、戦犯に憲法草案の作成を依頼したことへの批判を避けるために、これを近衛文麿の勘違いと主張した。近衛が巣鴨プリズンへの収監を前に服毒自殺した遠因にもなっている(と、自分にには思えてならない)。
- マッカーサーは日本の占領統治を、日本と日本人のためにではなく、自分が大統領になるために布石として実施している。
自分が感動したところは、
- マッカーサーが帰国するときに、見送りにいかなかったこと。(吉田茂は行って堅い握手をしたそうだ)
- サンフランシスコ講和会議で吉田茂の演説原稿を英語から日本語に書き直したことより、演説が無事に終わった後で一人涙を流している姿。
プリンシプル(原理原則)を貫き、日和見的な行動や考え方を厳しく批判する生き方をしている一方で、実に細やかで温かい心を持って周囲への気配りをしていたこともよくわかった。当たり前ではあるがやはり人を引きつけるのは原則論・理想論だけではない何かが必要だということは、心に留めて置きたい。